2015年07月08日
だれとでも寝る尻軽
と玲子をひっぱたいた。
「かあちゃん、よせよ」
為蔵が玲子の背中をつるりとさわると、
「今夜、玲子の部屋に行くから。いいな」
「そうだ。とうちゃんに味見してもらうのが一番だ」
「バ、バカなこと言うんじゃないよ」
「なにがバカなことじゃ」
「今どきそんな話があるかよ。一体なに考えてんだよ」
「玲子はどう思う?」
玲子は開き直って、
「私、構いません」
「ほら、為五郎見ろ。玲子の方がさばけとるがな。さっ、玲子行こう。ワシ、スッポン食っとるんだ」
「ちょっ、ちょっと待て」
「待たん。ワシゃ権利があるんじゃ」
「なんの権利だよ!」
ロビーにいた人たちが遠くで笑っている。
「とうちゃん、恥ずかしいよ」
「なにが恥ずかしいんじゃ。そんなヤワなこと言っているから日本人は卑屈になるんじゃ」
飛岡は頭をかかえた。
飛岡がやっとのことで父親から隔離して、部屋まで送り届けてくれた。玲子は髪をかきあげ、
「とにかく疲れましたわ」
「田舎もんばかりで申し訳ないな。絶対この部屋に来るようなことはさせないから」
「あたりまえですよ。どうなってんです、あなたの田舎は」
「すっ、すまん」
「あたし、すっぱだかにされたり、胸さわられたりしたんですよ。あげくが、なんであなたのお父さんと寝なきゃいけないの」
「すまん」
「すまんじゃないわよ」
飛岡も開きなおり、背広を叩きつけて、
「なんだよ、その言い方は。オラずっとあやまりっぱなしだよ。一体どうしたらいいんだよ」
「ずっとあやまっててよ」
「だからあやまるよ。悪かった、申し訳ございませんでした!」
「大体、あなたが私のことをだれとでも寝る尻軽女みたいに思ってるから、お父さんからあんなこと言われるのよ」
「思ってないよ」
「思ってるじゃない。今朝の電話のときだってそうじゃないの。あたしはただ夢を見てただけなのよ。それを男を連れこんだなんて」
「連れこんでたんだろう」
「連れこんでなんかいないわよ」
「じゃ、なんで朝っぱらからあんな鼻にかかった声出すんだ」
「女は朝はあんな声なのよ」
Posted by ンを連れて来て at 11:28│Comments(0)