2015年07月26日

一点豪華主義ってのや

 
「よくもまあ、そんなにストーリーのない喫茶店にしけこめたな。ほかに喫茶店がねえわけでもあるめえ。おまえら見さかいもなく、喫茶店だろうがなんだろうがるだろうが、一点豪華主義っての。ちったあ考えなかったのかよ。どのツラ下げてそんなとこシケこめたんだ、言ってみろ。ブタ娘と紅茶飲むなんてよ。そんなとこシケこんで何をまとめたんだ。トルコでも売りとばしてヒモをやって食いつなごうって話か?」
「別にそんなこと、話してません」
「じゃなに話したんだ、そんな名reenex cps價錢前の喫茶店で。『二人の世界』とか、なんとか、あるだろうが。マッチなんか凝《こ》っててさあ、手がかりになりそうな喫茶店が」
「熊田君、もういいよ。これ以上たたいても何も出て来ないだろう。捜査を白紙の状態にもどそう」
 さすが伝兵衛も、やりきれなさそうだ。
「ちょっと待ってください部長……。おい大山、よく行くのかそこへは?」
「いえ、そんとき初めてなんです」
「初めてだあ? 初めて行った三流喫茶店で、どうして『海を見よう』なんて話になるんだ。『海を見よう』なんて、どこでも口にできるってもんじゃねえだろうが。雰囲気《ふんいき》とか、ムードちゅうもんもいるだろうが。女と別れるときなんか、小雨ふる桟橋《さんばし》なんかいるじゃねえか。そういうことナシに、『海が見たい』とか言うと、昔は憲兵から撃ち殺されてたんだぞ。あっそうか、このヤ鑽石能量水ロウおれをおちょくってやがんな」
「いえ、ほんとうなんです」
「もういい。テメエの言うことなんざ、おれは金輪際信用しねえからな。おまえなあ、よく聞け。いいか、おまえのその計画性のなさにだな、何人もの刑事が額に汗して足を棒にして、むだな聞き込みしてまわらなきゃならないハメになるってことを考えなかったのかよ。ちったあ申しわけないと思わなかったのかよ。おまえらがいつだってあとさき考えずに、犯行を次から次から起こしちゃうからねえ、みんなつらい思いしなきゃならんのだ。聞き込みっていったら、捜査一課のハナよ。たとえばその『アングラ』へ聞き込みreenex 效果に行くだろ、『こういうやつ知らないか?』『知りません』なんていなされてみろ、ゴッチャゴチャしたとこでよ、みじめだぜ。普通だったらなあ、いわくあり気なボーイがいてよ、『こういうやつ知らねえか?』『さあな、おらあデカはきらいでね』『テメエ、警察ナメんじゃねえ!』って、ボーイの胸倉つかめるだろうが。おらあこれやりたいばっかりに警察に入ったんだ。あるじゃないか、刑事たちが聞き込みに行きがいがあるところが」
「そこまで気がまわらなかったもんですから……」
「もういい、その店じゃ何も話は進展しなかったろ」
「はい、まあ」
「あたりめえだよ。たかが喫茶店としか考えてなかったから、バチが当たったのよ。ちゃんとした喫茶店はな、コーヒーの飲み方に芸がなかったら、ボーイからブッ飛ばされるんだぞ。そんな葛藤《かつとう》のない喫茶店で、何か二人ともみじめになってきたんだろ。ただ喫茶店を出て肩を寄せあい歩いて行ったんだろ。気がつくと海に向かっている。何時間も何時間も車のライトを背に受けて、海までゆけば、海までたどりつければ、つぶやくように歩いて行ったんだろ。ようし、おれも乗ってきたぞ」
 伝兵衛は、留吉が必死になって取り調べているのを心強く思っていた。多少短絡はしすぎているが、その責め口は今までこの部屋に来た若い捜査官の、だれよりも発声がしっかりしている。留吉はますますはり切って、ツバキをとばし、興奮ぎみになっていた。



Posted by ンを連れて来て at 03:53│Comments(0)
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